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25 君たち男の子?

LA VENTICINQUESIMA PUNTATA  "LA CORDIALITÀ E LA QUALITÀ DI SERVIZIO"

第25話 君たち男の子?

わたしは世界中の観光客が集まる都市のホテルで働いているので、
人柄はお国柄でもあるということを目の当たりにしているのだが、
概して比較してみると、日本人男性は男らしくない

以下はかつてローマに住んでいた友人に聞いた話である。

現在、日本で団体旅行の添乗員をしている彼女は、
日本の旅行会社が主催する団体イタリア旅行、30人弱のグループを率いて
成田からイタリアに入った。
その中に、電車で移動するという行程があって、
大きなスーツケース20数個を車内に運び込まなくてはならなかった。
このグループの中には新婚旅行のカップルや若い夫婦、
独身らしき若き男性たちも含まれていたから、
当然働き盛りの男性が数人いたわけであるが、
なんと、この山のようなスーツケースは、
添乗員である友人と現地アシスタントのイタリア人女性とだけで移動させたのだそうだ。
男どもは手伝わなかったのである。

ナポリ中央駅での出来事。(彼女の日記から抜粋)

ユーロスター(イタリアの特急列車)を使っての移動があり、
電車に乗るときにスーツケースも一緒に電車に載せこむ必要がありました。
基本、お客さんは手荷物だけ持って、
バスから電車のホームまでは、
スーツケースは駅のポーターを利用します。
ポーターは車両の間にある荷物置き場まで載せこんでくれますが、
28人分のでかい荷物が私たちの乗る4号車の隣にある荷物スペースには入りきらず、
2号車の横にも積み込むことに。
それでも通路に2,3個はみ出てしまうので、
ナポリでのアシスタントのイタリア人の女の子、アンジェラと一緒に、
どうにかしようと試行錯誤しておりました。
ひとつひとつの荷物が大きくて重いので全くもって重労働なのです。
で、結局機内持ち込みサイズの小さめのスーツケースは、
座席上の棚に載せようということになり、
行ったりきたりしながら重たい荷物を運びますが、これまた一苦労…
その間、お客様は当然(?)座席でおくつろぎ。
そんな作業中、アンジェラがぽつりひとこと。

「日本人男性って力がないのかしら。」

確かに…

女の子二人で高い棚の上に荷物をあげようと悪戦苦闘している姿を目の当たりにしながらも、
手を貸してくれるそぶりは一切なし。

きっと、荷物を上げているのが添乗員とアシスタントでなく他のお客さんで、
さらにお年寄りであったりすれば、彼らも手を貸してくれたでしょう。

私はわかります。
彼らは「お客さん」として来てるから、
そういう気持ちが働かないんだろうってね。
でも、アンジェラに言われて初めて気づいた私。
仮に私が引き連れていたのがイタリア人のグループならば、
どう考えてもこの状態はありえないだろうな。
なんか、ちょっと悲しくなった。

ここから先、反感買うの覚悟で本音。
レディーファーストと、「おい、お茶」の文化の違いもあるだろうけど…
せめて、そんな世代でない若い男性達。
いくら私がたくましくても、力ではあなた方のほうが上。
せめてヨーロッパなど、そういう文化圏では
「お客である前にひとりの男性であってほしい」のです。
私が手伝ってほしいから、ではなくて
他の人から見て日本人がバカにされるから。
正直、女性に力仕事をさせているというだけで、ちょっと首を傾げられます。
そりゃあもちろん本当は日本国内でもそうであってほしいけど、
忌まわしき言葉「お客様は神様」が当然の国では土台無理っぽいから…
ニッポン男児のみなさん、どう思う?

彼女の述べるとおり、イタリアならば、
かよわき女性(かよわくなくても)に力仕事を少しでもさせるなんて、
男性としてあり得ない。
この話を彼女がイタリア在住の日本人ガイドさんに話すと、
このガイド嬢はこう言ったのだそうだ。
日本人観光客はあくまでもお客様なのだ、オトコである前に、と。
よく言ったものである。
こうまで言われるとは情けない。
しかしながらこれはアジア以外に住む日本人女性が少なからず感じている、
日本人男性観光客を評するに的確な表現であろう。
彼らはお客様だから、つまり金を払っているから、
何もしなくていいのだ。
わたしの友人がかよわいムスメじゃなくてよかったけど。
見た目強そうだから手伝わなかったのかもしれないけど。
オレは客なんだからと思っているのかもしれないけど。
そしてこのサービスにこそ金払ってんだぜと思ってるのかもしれないけど。

繰り返すがイタリアならば絶対にあり得ない。
力仕事、女性にさせたら男がすたるのだ。
それにここで彼女たちに手を貸して、
どこで見ているか分からない、通りすがりのブロンド美人か誰かに
「マア、この方ステキ」と思われるかもしれないという下心
これが無意識のうちに働いていたりするのだ。
ちなみにこの下心はイタリア人ならば
3歳の幼稚園児から100歳のじいさんに至るまで
誰もが必ず持ち合わせているものである。

日本人がこういった場合にとことん手を貸さないかと言えばそれは嘘になる。
添乗員の友人、電車を降りる際に思い切って、
荷物下ろしを手伝ってくれるよう若手男性陣に声を掛けてみた。
そうしたら彼らは賛同したのだ。
誰かが言えばやるのだ。
他からの働きかけがないとダメなのである。
情けない。

わたしは日本の宴席が大嫌いである。
日本に行けばわたしも社会人であるから一応従いはするけれど、
何故女性が酌をせねばならないのだ。
何もわたしが酌をしたくなくて言っているのではない。
女性が酌をするものだという風潮が嫌なのだ。
その分イタリアの宴会は気が楽である。
飲みたいだけ自分で注げばいい。
デートの時にはもちろん男性が女性のグラスにワインを注ぐのである。
高級レストランでは飲むペースを見計らってウエイターが無言で注いでくれる。

男性だ女性だと役割を決めるつもりはない。
しかし実際日本人女性が世界でモテるのに対して、
日本人男性がモテないのはどうしてだろう。
きっと理由はある。

ウェブサイト上に日記を書くとそれを読んだ人が感想を書いてくれるブログというものに、
例のイタリアの列車での出来事を記した添乗員の友人、こんなことを書いている。

日本に住む日本男児の反論が聞きたかったけど、だれも感想書いてこないぜ。ちっ。

わたしは、彼らには反論する余地がないのではないかと思っている。
ただ、こんな男たちを育ててきた土壌が日本にあるのは事実。
彼らを許してきた大和撫子たちのせいなのか。

日本社会におけるサービスの質がとても高いということは事実である。
例えばイタリアをはじめとする諸外国では、
公共機関が思うように動かないのは日常茶飯事である。
日本では正反対だ。
今や市役所はいつでも開いているし、
電車はピッタリ時刻表通りに来る、
生活していて不便なことなど何もない。
日本のサービスのレベルが高いのは、確かに客の過度の要求からきているはずである。

日本の旅行会社のサイトに、世界中のホテルの満足度を文章で書き込みできるものがある。
これによると、ローマのホテルの多くはかなり否定的な評価を受けている。
わたしの働いているホテルも例外ではない。
ローマのホテルのサービス内容では、日本人観光客は満足できないのだ。
サービス天国日本にどっぷり浸かっているから。
日本のサービスを海外で、特にヨーロッパや南米で求めることは不可能だ、と思う。

そんなわたしと友人の怒りをなだめるべく、
共通の友人から、オトナな内容の書き込みがあった。
彼女の発言で、この回のまとまりがつくような気がする。

日本男性に、突然海外に出た途端西洋基準の振る舞いを求めても気の毒かなぁ。
逆に行列を平気で無視して割り込む西洋文化だってあるわけだし。
(要領がいいのが、頭がいいと思ってる彼ら)

たぶん、ここで問題なのは、お客となった時の日本人の豹変振りなのかもしれません。
(普段、何かで一緒に行動しているときの日本人男性は、
たいてい率先して重いものを持ってくれていたという記憶があるし、
それをあまりにも当然としている女性が多くて嫌な気がした記憶もある)

女性男性の問題ではなくて、
日本人がお金を払ってしまった時、
接客の人を、同じ人間として見えなくなっちゃう面があるような気がします。
そんな中で、あえてサービス提供者の気苦労に気がつく人は、
本当に素敵だと思います。
(今回は力仕事だったから男性の無頓着振りが浮き彫りになったけれど、
絶対女性客も同じだと思われる)
そんな人、増えるといいね。

通訳の志緒野マリ氏もこの内容でエッセイを書いている。
大きくうなづける。

アメリカに居住経験のある本門佛立宗の福岡良樹氏は
その著書『人生を創るヒント』(本門佛立宗香風寺発行)でこう述べている。

店のオーナーや店員さんとお客さんの関係で言いますと、
日本では「ありがとう」という言葉は店側、
つまりお金をいただく側からお客に対して発せられる言葉で、
お金を支払う側は「ありがとう」と礼を述べたりはしません。
けれどもアメリカでは売り手と買い手は対等と言う観念があり、
互いに気楽に「サンキュー」と言い合っています。
とにかく、些細なことでも人の好意に対しては
「サンキュー」と礼を述べるのが礼儀なのです。
日本人の私たちも「ありがとう」という言葉を、
いつでも誰に対しても、もっと使いたいものです。

バカヤロー、日本にいる益荒男なんだから偉そうにしてたっていいんだよ、
という反論もあるかもしれない。
でも旅行にしろビジネスにしろ、
海外に出て日本人でない誰かと接したら、
あなたは1億3000万人の日本国民の代表なのである。
日本を背負っているのである。
だからそれが日本では当然の行動であったとしても、
周りから「日本人って…」と思われるような行動は、どうかやめてほしい。
あなた以外のその他1億2999万9999人も同じだと思われかねないのだ。

日本男児よ、
客としてぬくぬくとサービスを受けているのもいいけど、
イタリア男の男らしさも少しは見習って下さい。

アレ?イタリアと日本、
足して2で割ったら丁度いい?
って話はまた次回!

(2007年3月執筆を2008年6月改訂)

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